小津安二郎監督の遺作。
小津作品を久々に見ましたが、(かつてなら)どこにでもありそうな人間関係をじっくりと描くことの妙に気付かされます。
それを退屈さをちっとも感じさせず、映像だけで微妙な感情や関係まで描き出せるのは巨匠の力量ゆえでしょう。何気ない場面も多いですが、それらが全く無駄なく上手く機能しているように思います。
妻に先立たれた父親と結婚適齢期の娘を中心とした物語。
父親の平山(笠智衆)は娘の結婚などまだまだ先のことと考えていたが、些細な出来事をきっかけに自分のために娘が結婚出来なくなることを心配し、娘を嫁に出そうと取り計らう。
自分の世話をさせていたせいで娘が結婚する機会を奪ってしまった「ひょうたん先生」の後悔や、彼の娘が不意に泣き出す場面などは悲哀に満ちています。
娘をいよいよ嫁に出した直後のもの寂しさと孤独の描き方も素晴らしく、カメラを固定してモノや場所だけ映す手法が、寂しくなった家の中を巧みに描写しています。
今とは全く違う社会にすら思える社会関係も興味深い。あれだけ家族や知人が結婚を促すために動いてくれる社会なら、ほとんどの人が結婚できたことにも納得がいきます。
