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秋刀魚の味のとぽとぽのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.5
晩年の哀愁、いずれ巣立つ子供を想う複雑な親心と老いゆく者の孤独を際立たせつつも優しさが胸を打つ。小津安二郎監督最後のカラー作品は、巨匠名監督の最後に相応しい素晴らしい作品でなんとも心に居座る余韻を残していく。情緒的なのに不思議とどこか現実見据えた上で冷めてもいるというか、言葉・表現が正しいか分からないけど痛烈。素人目に見るとやっぱり答えの分かる硬いセリフのやり取りに繰り返し、そして一見特に何が起こるでもないけど度々長く回されるシーン尻。なのだけど、そこに技術的な面は分からなくとも感情に、また心に訴えかけてくるものがあるのをひしひしと感じる。定点で低く構えられた小津調。ただ淡々と生活を紡ぎ見 = 魅せる中で日常の気まずさに、味わい深さと深い洞察が。父、娘、双方の気持ちが痛いほど伝わってくるから余計に、こう胸を締め付けられてしまうよう。にしても路子の美しさと、本編中盤で大活躍する長男夫婦最高。あと主人公が自身を重ねる愛すべきキャラクター、ヒョータン。そんな一見腰が低く見るからに優しそうな主人公なのだけど、現代の感覚で見ると、さらりと結構毒舌なことに地味に驚かされた。娘を見送った後の終盤なんて素晴らしすぎてもう……

いやいや…あのほうの。あのほうの。やめちゃえ、やめちゃえ、駄目、駄目。娘を便利に使うてしもうて…。小せえんだ、太ってんだ、可愛いんだ。そうしろ、自分のことは自分でするんだ。お父さん…さぁ、行こう。不潔に見えるんだがね、女の子はつまらん、育て甲斐のないもんだ。かけましょうか、あれ?おい
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