ロックウェルアイズ

アジョシのロックウェルアイズのレビュー・感想・評価

アジョシ(2010年製作の映画)
4.8
質屋を営みながらひっそりと暮らすテシクの元には、隣に住んでいるソミという少女がよくやってくる。
クラブダンサーの母親からあまり相手にされず、いつも孤独だったソミはテシクのことをアジョシ=おじさんと呼んで慕っていた。
しかし、ソミの母親が麻薬密売に加担したことで、ソミと母親は凶悪な犯罪組織に誘拐されてしまう。
テシクは命がけで救出に向かうが、組織の強敵たちが行手を阻み……

アジョシ。
シンプルなタイトルだからこそ響くものがある。
ただの隣の家のおじさん。
血の繋がりもない正体も分からない。
しかし、孤独な者同士、互いに欠けた部分を埋め合うように心を通わせる2人には、血の繋がりを超えた切なくも愛おしい絆がある。
ソミはテシクを自分の父親として、テシクはソミを自分の子供として、愛していた。
孤独からの解放、そして別れ。
哀愁漂うテシクの立ち姿と純粋すぎるソミの笑顔に泣いた。

妻との悲しい過去、そしてソミという守るべきもの。
テシクは背負っているものが違う。
もちろん元々のスキルも高いけれど、そういったバックボーンが彼をさらに奮い立たせる。
全てを失った者は最強。太刀打ちできるわけがない。
容赦ない怒りの感情が暴力となって覚醒する。
血も涙もない過激なアクションに惚れた。クライマックスのアクションは特に素晴らしかった。

今の韓国がどうなのかは分からないが、中国とかではきっと今も現在進行形で起きているであろう問題。
こういう闇を覗き見て社会問題を考えることができるのも韓国ノワールの魅力の一つ。
故障って書いてあるコインロッカーとかってもしかして本当にそういうことに使われているのかもしれないと少し恐ろしくなった(考えすぎだろうけど)。

ラストは本当に最悪の鬱展開も覚悟したけど、一応救いがあって良かった。
「お前は明日を生きる
明日を生きる奴が今日を生きる奴に殺される
俺は今日を生きる
それがどれほど悲惨なものか」
テシクの言動や演技が悉くカッコいい。
胸が締め付けられる上質なサスペンス映画だった。

そういえば、、、
キム・セロン大きくなって今どうしてんだろうと思ったら、昨年5月に飲酒運転で故起こしてた。何やってんだよ!
映画の中で不遇なこと多いんだから、現実くらい頼むから幸せになってくれ!