ヤンデル

波止場のヤンデルのレビュー・感想・評価

波止場(1954年製作の映画)
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・エリア・カザン監督やマーロン・ブランドが演技にスタニフラフスキーシステム、いわゆるメソッド演技をハリウッドに持ち込んだ映画とされており、美男美女の俳優が型にはまった演技をしていたそれまでのものとは一線を画す革新的な映画であった。

・劇中で描かれたように、当時アメリカの波止場はマフィアが仕切っていることが多く、地元の労働者に荷下ろしの仕事などを斡旋しては報酬をピンハネしていた。そういった実態を社会問題として映画で描き、マフィア経済を指摘する意義もあった(マーロン・ブランドはその後最も有名なマフィアのボスとなるが…)。

・また、主人公のテリーがボクサー時代に兄のために八百長をしたことに触れられるが、こういったマフィアがボクシングの試合を仕切り、裏では八百長をさせて金を得ていたこともあり、これについては映画「レイジング・ブル」でも描かれた。

・ボクサーくずれの主人公が「Bum」(バム、チンピラ)と呼ばれるが、女性との出会いをきっかけに自分を取り戻す物語は「ロッキー」に強く影響している。また「レイジング・ブル」でも「俺はチンピラじゃない」という台詞が引用されている。

・劇中ではキリスト教のイメージも加えられている。テリーの兄は殺された際に磔(はりつけ)のようにされるが、それを見てテリーはマフィアへの決別を決意し、また、最後はテリー自身が血だらけになって群衆の中を歩く姿が描かれる。

・エリア・カザンは当時ハリウッドの赤狩り(共産主義の排斥)の対象となっており、共産主義を密告したことで自身は追及を逃れている。つまり、エリア・カザン本人は赤狩りを良く思っていないにも関わらず密告によって仲間を売ってしまった経験があるが、この映画の物語は声を挙げない人々の中で主人公が密告によって正義を下す物語となっており、複雑な構造になっている。
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