順慶

麦秋の順慶のレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
4.2
午前十時の映画祭にて。初安二郎でした。

正月なんかに実家に帰ると、いとこが子どもを連れて集まる。何年か前だが「子どもが増えてきたな」と呟くようにいうと、「30年前もそうだった」と義父が言った。そのころおれは子どもだった。
映画を観ながらそんなことを思い出した。

戦後のある家庭の数日間。
娘の結婚を心配する親族。

それだけのストーリーで、どこにでもありそうな風景。
家族の少しずつの変化は、気づかないふりをしているだけで、確実に変わっている。
そして結婚という大きな節目を迎える紀子とその周りは、ざわざわと動きだす。
時代もあり、背景には戦争の後も見える。

食事シーンやお茶を飲むシーンも多く、あまりにも日常で、その日常の会話とユーモアのある演出(特に子どもだが、子どもだけじゃない)で楽しく見ていられる。

変わるということは、抗えないこと。映画「海街diary」をみた後にも感じた。どちらも鎌倉が舞台だった。そういえば、砂浜を歩くシーンも共通点だ。

ラストカットは、大和に行った老いた父と母が見ている麦畑。風に揺れる麦の向こうには耳成山だ。
奈良の橿原市で生まれ育ったので、懐かしの風景にじ〜んときた。
順慶

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