Inagaquilala

ヘアピン・サーカスのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ヘアピン・サーカス(1972年製作の映画)
4.0
確か監督の西村潔は、石原慎太郎と一橋大学では同級生で、同じ年に東宝に入社している(石原はすぐに退社)。東宝では異色の、アクションが得意の監督で、トランペッター日野皓正の手になる挿入曲「スネイク・ヒップ」が印象的な「白昼の襲撃」(1970年)は、深く印象に残っている監督作品だ。この「ヘアピン・サーカス」では、同じくジャズの菊地雅章を全面的にフィーチャー。作品の大半は、車によるアクションシーンなのだが、ジャズと車(トヨタ2000GT他)が見事にオーバーラップして、とてもスタイリッシュな作品をつくりあげている。

1972年の昨品だが、すでに日活のニューアクションは命脈が絶たれており、その「DNAれを、なぜか東宝の西村潔が受け継いでいた。というよりも、日活のニューアクションをさらにモダンにして磨きをかけた作品と言ってもいいかもしれない。原作は五木寛之の短編小説。主演に現役の人気ドライバー、見崎清志を起用しており、少しぎこちない台詞回しと表情が、不思議な雰囲気を醸し出している。

レースのシーンやカーチェイスの場面はとにかく素晴らしく、クロード・ルルーシュがパリの街をワンカメラで疾走した「ランデブー」のような映像を、この当時の首都高速で撮影している(いまではとても無理だと思う)。70年代初頭の時代がどっぷり詰まった作品で、物語にそれほどひねりがあるわけではないのだが、観た後には、鮮烈な印象が残る。西村潔監督の作品は東宝のラインナップからは外れているせいなのか、あまり観賞する機会に恵まれないが、
こうしてYouTubeにあがっているのは貴重だ。
Inagaquilala

Inagaquilala