Kuuta

パラサイトのKuutaのレビュー・感想・評価

パラサイト(1998年製作の映画)
3.6
ロドリゲスの良作。二つのジャンルを掛け合わせるホラー映画の定式がハマっている。

今作はボディスナッチャー×青春学園もの。学校の先生や同級生が宇宙人に寄生され、いじめられっ子やアメフト選手など、異なるスクールカーストの人物が協力して立ち向かう、というお話。

オープニング、正気なのか寄生済みか、曖昧な人が殺人を犯すので、宇宙人とは関係なく「普段から秘めた怒りが爆発しただけ」にも見える。気の利いた導入。水を好む宇宙人の習性が「水飲み場の行列」「上を向いて雨を飲む」といった小学生みたいなルックで表現されるのも楽しい。

この映画の魅力は、「一つになろう」と誘うエイリアンの主張が、普遍的な若者の孤独感と重ねられている点だ。

学校では優しそうに見えた親が、家に帰ると厳しいと分かるなど、今作の登場人物はそれぞれ、学校で見せる顔とは違う側面を持っている。友人はいつの間にか見た目からして雰囲気が一変し、自分自身の立ち位置も分からなくなってくる。それは自然な事なのか、宇宙人のせいなのか。

他者への不安を抱えながら自分を保ち続けるのは、孤独で辛いことだ。でも「誰も信用できない」と閉じこもってしまえば、世界は滅びてしまう。否応なく訪れる変化を少しずつ受け入れ、スクールカーストという、自分を守る殻を破って行動する若者たち。ティーンエイジャーから大人に変わるほろ苦さが、学校を舞台にしたエログロなホラーとマッチしている。

また、ど頭のオフスプリングに始まり、劇中の音楽が私の世代直撃の懐メロばかりで切ない気持ちにさせられた。特にエンドロール。オアシスのStay Youngから、デヴィッド・ボウイのChangesのShawn Mullinsによるカバーへの繋ぎ。

「若くて無敵であり続けよう。何故なら自分が何者なのかは、自分が一番分かっているからだ」→「何が本物で何が偽物なのかなんて、確かめる暇もなく人は変わっていく。それが時間というものなんだ。時間の痕跡を、僕らは追うことが出来ない」。72点。
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