似太郎

近松物語の似太郎のレビュー・感想・評価

近松物語(1954年製作の映画)
4.3
巨匠・溝口健二監督による江戸時代色豊かな不倫映画。撮影、美術、セット、共に超一流の芸術品。

主演を務めた香川京子と長谷川一夫の幽玄なオーラ、というかアンモラルな関係性が際立っていて「イケナイ事をしてるみたいで、ダメなくらい気持ちいい〜」っていう類の、謂わば極致表現みたいな映画。

この手の禁断の恋物語には泣けるものと、泣けないものがあるのだが、本作は明らかに後者。この二人の男女に大して感情が籠らず、階級制が根強い江戸時代だからこそ成立した話という感じがして、やってる事自体は溝口監督の過去作の焼き直しみたいだった。(『残菊物語』など)

内容が古めかしく、現代性が感じられない。どんなに宮川一夫氏によるカメラが素晴らしくても、キャラクター造形を含めて「保守色」「記号色」バリバリできついものがある。内田吐夢の『浪花の恋の物語』も同様のテーマだが、あの映画の方が一種の観念が導入されていて個人的に好みだったりする。両監督の視点の落差には愕然とする。

大映の永田雅一プロデューサーによる世界戦略を狙った「日本スゴイ!」マーケティングが、些か鼻についた作品でもある。終始ナヨナヨした長谷川一夫の中性的な演技が、それこそヨーロッパ人好みなんだろうけど。10代で観たときは感動したが今観ると結構、強引な展開でシナリオ面が引っかかる作品。

黒澤といい溝口といい、世界戦略を狙った巨匠の作る「様式美」系芸術作品というのは、ぼくのような70年代東映トラッシュムービー好きからしたら「ケッ」て感じもするのだが?🧐(毒舌吐いてしまってすんません…)
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