TAK44マグナム

イントゥ・ザ・サンのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

イントゥ・ザ・サン(2005年製作の映画)
2.9
いま、強いオヤジといえばリーアム・ニーソンですが、強すぎるオヤジといえば、そう!この人をおいて他にはいない!
スティーブン・セーガルです!
かつて日本の大阪に住んで結婚、そしてアメリカへ帰っても結婚して、それが重婚だったという、男の中の男!
そんなセガールが満を持して第二の故郷ともいうべき日本で撮った映画が「イントゥ・ザ・サン」であります。
どうせなら馴染みのある大阪にしたら良かったのに、舞台となるのは首都・東京であります。

CIAの凄腕エージェントであるセガールは、東京都知事暗殺事件をヤクザのテロとして調べるFBIに協力するCIA(ええい!ややこしい!)から、「日本とヤクザに精通している」という理由で協力を要請されます。
セガールは協力はするが自分流でやると言って、FBI捜査官と共に、華僑の大物や日本の大物財界人、ヤクザの大物、ヤクザと接点のある入れ墨彫師、更には恋人であり情報屋でもあるクラブのママなどを巻き込みながら捜査、やがて麻薬密売でのし上がろうとする新興ヤクザの大沢たかおが浮かび上がるのですが・・・といったお話です。

なんとなく、とてつもなく安くなった「ブラックレイン」みたいな感じといったら分りやすいでしょうか?
俳優陣の演技も、演出や脚本、おまけに音楽まですべてが安っぽいのが特徴です(苦笑)。
つまりは、いつものセガール映画ということでして、それを東京で撮ったというのが本作最大のトピックなんですな。
なぜか、中華街も東京とテロップが出ますが・・・。
あと、ヤクザの詰め所が築地市場にあったり、大沢たかおのアジトがどこか中華も混じった風の寺だったりするのが、いつものハリウッドにおける「勘違いジャパン」でして、そんなのが満載な映画なのが逆に何だか安心しちゃいます。

まあ、映画としては壊滅的に面白くないんですけど、何がすごいって、とにかくすべてが意味不明ってところです!
セガールの捜査は行き当たりばったりにしか見えないし、そのお陰でいろいろと人が死んじゃいます。
セガールのアクション映画なのに、クライマックスまではショボい喧嘩がちょっとあるぐらいで、ほとんどアクションらしいアクションシーンがありません。
そして、大沢たかおの狂いっぷりが半端なくて、タバコ吸ったりしている時以外は常に敵・味方問わずに常にだれかを殺してます(汗)。
こいつは結局のところ何がやりたいんだ?というのも、最後まで全くわかりません。なんだか「アメリカにも乗り込んでやる!」とか息巻いてましたけど、やっている事に一貫性がなく、さっぱり考えている事が理解不能で、ただの狂ったチンピラにしか見えないんですな、これが。
現在だったら、きっとこんな役は引き受けてないと思うんですが、他にも寺尾聡や伊武雅刀なんかが本当に何で出てきたのか全然わからない役を超真面目に演じていたりするので、日本の役者さんはアメリカ映画ブランドに弱いのかもしれないなあ・・・などと思ってしまったりしました。
これ、あくまでもセガール映画ですよ?
「ラストサムライ」とか「硫黄島からの手紙」とか、ああいったのがちゃんとしたハリウッド映画であって、セガール映画はセガール映画でしかないんだと、誰か教えてあげる人はいなかったのでしょうか。
栗山千明なんて出てくるの一瞬ですよ。「ワイルドスピードX3」の北川景子より酷い扱い!
そのくせ、モノマネのコロッケがメチャ目立っていたり!
「ロボコップ五木ひろし」のネタはアメリカ人の目にどう映ったのでしょうか!?
ちなみに、実娘である藤谷文子の「ガメラ」出演シーンが、劇中のある場面で出てきたりするお遊びもありますよ。

それにしても、散々捜査した挙句、結局のところ最後は殴り込んで皆殺し!それでオッケーになっちゃうなら、最初っからセガールが乗り込んで皆殺しにしちゃえばよかったじゃん!・・・と、観たら誰もが思うでしょうね、きっと。
クラブのママとのデート場面とか、他にもまったく必要ないと思われるシーンがたくさんあるんですけど、セガールが東京観光して、女優とエロエロやりたかっただけなんじゃないかと勘繰りたくなりますよ。というか、たぶんそれが正解です(笑)

劇中、英語はもとより、日本語や中国語が飛び交うバイリンガルな映画なんですが、日本人同士なのになぜか英語で話したり、日本語と英語が混ざり合ったルー大柴みたいな会話だったり、観ていて訳が分からなくなるのもスゴイ。
何言っているのか全然聞き取れない台詞も多数あって、そのほとんどがセガールです!
セガールは一応、日本語も話せるらしいのですが、とにかく台詞が滅茶苦茶な上に、何言っているのか分からない!
「すみません」とかは聞き取れるのですが、妙にゴニョゴニョして聞き取れない台詞が多いったらありゃしない!
そして、日本語の時の演技力がゼロ!
「超時空要塞マクロス/愛おぼえていますか」のケント・ギルバートより下手!
そんなセガールの日本語が笑えるポイントになっているんですが、最高に笑えたのがクライマックス前の殴り込みを決意する場面です。
仲間の前で、「(大沢を)今から殺りにいきますよ」と堂々と宣言、続いて自慢の愛刀を見せながら、「これ人斬れますよ~!これ、今晩使いますよ。人斬れますよ、これは!」と、世にも恐ろしい台詞をどうしてだか敬語でまくしたてるセガール!
いや~、腹がよじれるかと思いましたよ、マジで!

そして、なんだかブルース・リーの映画や「必殺」シリーズを観ているかのような寺での殺し合いに雪崩れこむわけですけど、セガールVS大沢たかおという、二度とは見られないであろうビッグマッチが本作のメインイベント!
撃ってしまえばいいのに、どうしてかセガールが剣の達人だと知っているにも拘わらず刀で迎え撃つ大沢たかお!
さすがは幕末にタイムスリップした男ですよ!関係ないけども!

最後の最後まで微塵にもキレの無い映画ですが、あのセガールが日本リスペクトの映画を作ったというだけでも意義があるので、どこまでいっても「ヤクザ」「ゲイシャサン」「スシ」「パチンコ」なジャパンとセガールの、どこかズレまくったケミストリーを是非とも堪能してほしいところです。
まあ、堪能しないほうが時間の節約になりますけれど。


レンタルDVDにて