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ビッグ・フィッシュのatsukiのレビュー・感想・評価

ビッグ・フィッシュ(2003年製作の映画)
4.7
【夢に生きる事の素晴らしさ】

あなたの夢はなんですか?

庭やプールのついた一軒家、高級外車、美人な奥さん、イケメンな夫、名誉、地位、権力、大金持ち…

こんな言葉がある。

「夢は理想の積み重ねであり、理想の積み重ねとは努力の積み重ねであり、努力の積み重ねとは今この瞬間に生かされている事に気付き、生き続けようとする術を全うする事なんだよ」

エドワードは夢に生きた。

確かにウィルの様に現実を見て生きる者にとって、エドワードの話など絵空事でホラ話にしか聞こえないだろう。夢を見て生きるなんて馬鹿らしい。もっと現実を見て生きるべきなのだと。しかし、ウィルも元から夢を見ていなかった訳ではない。それはウィルだけでなく、観客である我々もそうである様に子供の頃は誰しもが夢を見た。何故に人は年を取るたびに夢を失って行くのだろうか…経験を積んだから?その経験によって夢などないと思わされるから?

周りにある全てのものが夢にも思えた子供時代。夢とは楽しさであり、喜びであり、生きがいである。現実だけを見ていると夢を失う。夢を失うと人生は限られ、狭まってしまう。であるからして我々は夢を見るのだ。夢を見ることこそ人生であるのだから…

もしも上の言葉の様であるならば、夢とは今その瞬間を生きることなのだ。

「どんなエサにも、ルアーにも引っかからない大きな魚。故に誰もが追い求める、そんな魚に人はなるべきだ」とエドワードは言った。ここでは「なれ!」と言ってるのではなく、「なるべきだ」と言っている。夢、いわゆる目標をその様な高みに置き、少しでもその目標に近づく為に、今その瞬間を生き続け様とするべきだ。努力を積み重ねる事で理想を築き、理想を積み重ねる事で夢を実現させる。

人生に置いて近道だけならどんな楽な人生だろうか…しかし、積み重ねとは近道ではない。人生は遠回りばかりだ。でも遠回りするのもいいじゃないか。そこは楽な道でもない。辛いし、苦しいし、困難な道ではあるけれど、夢を実現する為にその瞬間を生きる事こそ積み重ねである。

ゴルゴ松本さんが言ってましたね。
困難、災難、苦難。人生に起こる様々な難が無い人生は無難な人生。反対に様々な難が起こってしまう人生は有難。つまり、有難い人生と…

話が少し逸れた気もしますが、我々は夢を見て、夢を叶えようとし、夢に生きる。そんな普遍的にも思えるメッセージをティムバートンが作り出した映像、つまり夢によって表現される。エドワードの話によって、夢と現実が交互になりながら進んでいく。夢の方の話はティムバートン色ムンムンのファンタジーで進む。ラストもTHEファンタジー的な展開である為に好き嫌いは分かれるだろうか。

けれども他のティムバートン映画に比べたら今作は現実に最も近いのではないだろうか。というのもラストのファンタジー的な展開も現実を見ていたウィルの変化の瞬間を映像的に見せるメタファーの様なものだし、あくまでこの映画は現実。エドワードの話によって夢か、現実かの境界線が分からなくなっているだけ。

大きな休み明けの校長先生の話はつまらないが、友人との話は楽しい。エドワードの話とそれを映像化して見せられるこの映画はいわゆる後者の話。聞いていて楽しいのだ。たとえそれがホラ話であろうが、その楽しい話の世界に入り込んだ後に見せられる意外なラストの結末は込み上げるものがあり、感涙。そして伝わるメッセージは夢に生きる事の素晴らしさを教えてくれる。
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