プペ

デッド・サイレンスのプペのレビュー・感想・評価

デッド・サイレンス(2007年製作の映画)
4.0
本作は監督ジェームズ・ワンと脚本リー・ワネルの『ソウ』のコンビによる正統派ホラー。
『ソウ』がシチュエーション・スリラーという当時としては革新的なホラー映画であるのに対し、本作はいまどき珍しい王道すぎるホラー映画だ。

謎と恐怖でストーリを引っ張っていく点は『ソウ』と同じだが、田舎町の持つ不気味さであったり、そこに伝わる言い伝えなどで世界観を一から作り上げている点が最大の特徴。
むしろ懐かしさすら感じてしまうほどに不思議と居心地がいいホラー映画だ。
かといって怖さがないわけではない。

もちろん、ホラー描写にも力を入れている。
特にホラー描写を腹話術をモチーフにした恐怖演出に徹底していた点は好感が持てる。

腹話術師メアリー・ショウの霊や不気味な腹話術人形など、視覚に訴えかける恐怖描写が多く、その造形のどれもが凝りに凝っていて印象深い。
叫んだら殺されるという設定など、恐怖描写に直結するアイデアや設定も豊富。
ラストのどんでん返しもまた腹話術ならではによるもので、このどんでん返しが大味なのもホラーならではで楽しい。

そして、なんと言っても本作に感心させられたのはどう転んでもバッドエンドにしか行き着かない脚本ではなく、主人公の選択次第ではハッピーエンドも望めた点。
例えば人形が届いた段階で警察に引き渡していれば、主人公夫婦は無事だったはずだ。
酷い目に合うにはそれ相当の理由があるのも私好みだった。


同監督、脚本のコンビによる作品に『インシディアス』があるが、この二作を観ただけで二人がいかに過去のホラー映画に精通しているか、リスペクトしているかが伺える。
幽霊屋敷を舞台にした『インシディアス』、田舎町を舞台にした土着的ホラーの本作、どちらもホラーの王道的な設定であり、伝統をなぞるだけでなく、両方に新しさを盛り込んでいるのがこのコンビの最大の魅力だろう。
プペ

プペ