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七人の侍のシネラーのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
5.0
黒澤明監督の代表作であり、
数年前に初鑑賞して以来の再鑑賞。
作品自体の面白さはさることながら、
個人的には凄まじいという印象が
強く残る傑作映画だ。

物語自体に大きな捻りはなく、
野武士に苦しめられる百姓達が
侍を雇って村を守ろうする
王道な時代劇だ。
もっとも、それは本作が古典として、
後の時代劇に踏襲されている為だと
言える。
只、侍と百姓の生き方の違いを
多面的に強く描写している作品は、
本作をおいて他にはないだろう。
更には、本作の主となる侍達だが、
どの人物もそれぞれの良さがあり、
現代においても格好良いと感じられる程
に魅力的である。
侍達を率いる島田勘兵衛(志村喬)、
コミカルな菊千代(三船敏郎)、
寡黙な久蔵(宮口精二)の三人は
特に好きだ。
そして、物語後半からの合戦場面は、
危ないと傍から見てても思う位に凄い
と感じられる。
その合戦についてだが、戦略の構築が
丁寧に描かれている事も良かった。
結末に関しては、やるせなさの残る
苦い描写と台詞の虚しさが合わさって、
ため息が出てしまう。
勧善懲悪な時代劇が盛んな時代に、
この結末に観衆はどんな反応だったのか
気になるところである。

半世紀以上前の作品の上にモノクロ
である事から、躊躇してしまう人も
一定数いると思うが、
現代の邦画でも本作を越えた作品は
ないと個人的には思ってしまう。
尚、上映時間の長さで躊躇している
のであれば、中盤に"休憩"があるので、
そこで区切って鑑賞しても良いと思う。

しかしながら、本作は全く無駄と
思える場面もない映画であり、
個人的には時間を忘れさせる作品
ですらある。
名誉も何もない、
侍達の漢気に胸打たれる傑作だった。
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