ゆみゆみ

七人の侍のゆみゆみのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.5
3時間はさすがに長いと思って、観るのになかなか勇気がなかったけど、思い切って観た。凄かった。一瞬たりとも退屈に思う時間はなくて、久々に面白いなぁと観ながら何度も感嘆の言葉が漏れた。

【あらすじ】
戦国の世。野武士の蛮行に疲弊したある村。麦の借り入れ後に、村を襲われることがわかっている村人たちは、どうにかこの野武士の襲来を防ごうと考え、武士を用心棒として雇うことにする。

ため息が出るほどよく作り込まれた人物設定とストーリーで、これぞ映画だと言わんばかりの完璧な作品だった。

一番に請け負った勘兵衛(志村喬)は、完全なリーダーで、人格者であってカリスマ性と友愛の心を持ち合わせる。
二人目が五郎兵衛(稲葉義男)。勘兵衛に一瞬で惚れ込み引き受ける。
三人目は七郎次(加東大介)。かつての勘兵衛の家臣。
四人目は平八(千秋実)。五郎兵衛が勧誘してくる。陽気で場を和ませる。
五人目は久蔵(宮口精二)。久蔵と浪人との果たし合いの場面に遭遇した勘兵衛に誘われ、一旦は断るものの、後に宿に訪ねてくる。凄腕の剣客。
六人目は勝四郎(木村功)。最初から登場しているが、子どもと言われ数には入れられていなかった。
そして最後の七人目。一番完璧なキャラクターがこの三船敏郎演じる菊千代。菊千代のコメディ要素が場を盛り上げて、更には悲哀を呼ぶ。なんてよく出来た設定なんだ。

一人一人仲間に加わるという展開は、否が応でも胸が高鳴る。

そしてこの七人のキャラクターが存分に活かされたストーリー展開と、農民の中にもキャラが立っていて、それぞれに物語があり、それもストーリーにうまく絡み合って行くのは、気持ちがいいくらい。

馬も演技してた。
64年前の作品ですよ。戦後間もなくの作品なのに、この技術の凄さは何だー!
黒澤明のこだわりが凄いのがわかる。以前テレビで黒澤明のこだわりについての逸話を聞いた。それがこの作品でもすごくよくわかる。

雨のシーンや火事のシーン、一転花畑のシーン、また子どもと戯れる菊千代のシーンなど緩急のバランスとラストへ向けての緊張感の高まりは、3時間をあっという間に思わせる。うまいなぁ。

映画って黒澤明以前と以降じゃないの、って思ってしまう。多くの映画監督が黒澤明から学んだと思う。映画作りのまさしくお手本。
ゆみゆみ

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