安堵霊タラコフスキー

白いリボンの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

白いリボン(2009年製作の映画)
5.0
初めて劇場で観たハネケ作品で、審査員イザベル・ユペールの身内贔屓が確実にあったろうと思ったもののハネケが遂にパルムドールを受賞した作品ということで期待を込めて劇場に足を運んだが、その出来に完璧に打ちのめされたのを今でも覚えている

ハネケはこれ以前の作風や撮影スタイルからもベルイマンやタルコフスキーの影響受けまくりなんだろうなと思ってはいたのだけど、この作品のモノクロ撮影や舞台の村の雰囲気が60年代に彼らの手がけた作品を思わせるものがあって、同じく彼らの作品が好きな身として実に心地良かったけど、この作品がベルイマンの逝去後初めて作られたハネケ作品(ファニーゲームUSA製作中はおそらくまだ存命だった)ということを考えたら、もしかしたらベルイマンに対する敬意と哀悼の念を込めたのかもしれない

そして内容自体は大人たちの利己的かつ無慈悲な振る舞いとその被害に見舞われる哀れな子供たちを静謐なタッチで描いた、ハネケらしく後味の悪いものとなっていてやはり強烈だったのだが、そんな行為を聖職者や教師までしている点に成熟した人間の汚さや愛なき教育の愚かしさを感じ取れるのもハネケのニヒリスティックな人間観が垣間見られて、これまた同じ冷笑主義者として共感を覚えた(そしてそれが逆に愛の重要性を強調しているように思えるのも実に良い)

ということでこれ以前の作品でも既にハネケはお気に入りの監督となっていたのだけど、この作品でまた自分の好みにドンピシャではまったのを感じ、こうも自分の気に入る作品を発表してくれるハネケに一層親近感を覚えることとなった