主人公が文学的な語りをヴォイス・オーバーでする作品に外れはない。
ザーザー振りの、イギリスらしい悪天候が印象的な映画。
荒んだウィズネイルとの生活(汚い部屋!)や宛てもなくフラフラと街や田舎道を2人で歩いたり、バーでとぐろを巻いている、ダウナーな雰囲気はかなり好き。
イギリスの田舎の田園風景がこれまた美しい。
「僕」役であるポール・マッギャンの着こなしや丸いサングラス姿の出立がカッコよい。リチャード・E・グラントのバキバキの眼がいかにも不健康なウィズネイルを表現していて忘れられない。
モンティや変な喋りのエージェント、肝っ玉のエディ、冒頭にバーで2人に絡んでくる親父やら田舎町の人々、警官まで、脇役も変なヤツばっかり。
いつまでも一緒にこのままだと思っていたのに、主役を掴み今の生活から抜け出す糸口を見出した僕を、未練がましく引き止めるウィズネイルが切ない。
多分、ウィズネイルは「僕」を下には見ないまでも、自分にいつも振り回されている「僕」が自分を越していくとは思っていなかったんだろうな。
自分の後ろにいると思っていた人間に先を越されていく寂しさや、自分がいつまでも同じ場所に留まり続けていくことへの焦りや諦念。
新しいステージに進む者と残される者、人生の岐路で道を違えた2人の、青春と友情の終わりを描いた作品。