ユースケ

桐島、部活やめるってよのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

桐島という学園生活の中心を失い右往左往するリア充組と桐島の存在なんて最初から関係ないから通常運転の非リア充組。

何でも出来るからこそ結果や意味を求めてしまい学園生活を楽しめない宏樹(東出昌大)は、結果も意味も求めず映画制作に打ち込む前田(神木隆之介)の姿に価値観が揺らぎ、前田のカメラのフレームの中で泣き出しそうな表情を浮かべてしまうのだった。
野球部が練習するグラウンドを見下ろしながら桐島に電話をかけ続ける宏樹は、桐島に助けを求めたのではなく、自分のやるべき事を見つけた事とそれをやり切る覚悟を桐島に伝えたかったんだと思います。

自分のやりたい事をやり通した前田と野球部の部長、失恋を作品に昇華させた前田とブラスバンド部の部長、自分のやりたいことをやっている人間はブレない。そんな人間こそ本当のリア充だ…というスッカスカなリア充気取りに対する監督の恨みを感じる素敵な作品でした。

ちなみに、本作の元ネタであるフランスの劇作家サミュエル・ベケットによる戯曲【ゴドーを待ちながら】のゴドーがゴッドの隠語だったように、桐島はキリストの隠語です。なので桐島は絶対に現れません。

再鑑賞後の感想…本作は登場人物の誰かに必ず感情移入させられてしまう怖ろしい作品であり、可愛くて映画好きで思わせぶりでズルい女だと思っていた橋本愛は心の奥底でパーマより前田を求める理想の女だと思いました(妄想)。だって塚本晋也の【鉄男】を映画館で観賞する女が悪い女のわけないもの。

武文(前野朋哉)「体育の授業で何点取ったってな 無意味」
前田「うん」
武文「Jリーグ行くんだったら別だけど」
前田「言えよ 直接」
武文「言わない 好きなだけ 不毛なことさせてやる」
体育のサッカーの後のこの会話が一番グッときました。そうです。わたしも本当のリア充だったのです。