何かと“噂の作品”というイメージだけで、これまで機会がありませんでしたが、ようやく12年越しで観られました。
高校生たちの数日を描いた群像劇ですが、10人以上もいる主な登場人物のキャラクターをわかりやすく描いて、それでいて主軸の物語やメッセージなんかもしっかりしていました。とてもよくできた映画だと思います。高校生たちの家庭環境を描かないことで、あくまで学校での微妙なポジションとか、個々の特性とかが際立った印象です。
すでに大人になって主役級で活躍している若い俳優陣が豪華で、リアルタイムで観ていたら違った印象だったと思います。ちょっと不覚でしたが、松岡茉優さんはエンドロールまで気付きませんでした。さすがに当時から演技はうまいんですが、なんとなく顔立ちが幼かったというか…。
誰もが自分の高校生のときを思いだしながら観るはずですが、自分は35年前くらいのことなのに、あの当時のことを鮮明に憶えているのが恐いくらいです。ただ、いわゆる文武両道の進学校だったので、みんな部活と受験で余裕がなく、同級生との人間関係を深める友人は少なかったかもしれません。中学生まで優等生だった人間の集団のようなところなので、“桐島”のような誰からも一目置かれる突出した存在がいなかったし、その中位置にいるような自分には、ヒエラルキー構造があったとしても、それを意識することもありませんでした。この作品ではモブキャラになっているような存在です。
主役は神木隆之介さんが演じた前田でしょうが、やっぱり東出昌大さんが演じた菊池の宙ぶらりんの設定が物語の中心にあったような印象です。彼のような葛藤は経験していませんが、とても共感できる存在でした。野球部のキャプテンがちょくちょく誘っていましたが、菊池のような存在を周囲の大人が放置していてはいけないと思います。
前田のように意味があるのかないのかわからないままでも、主体的に好きなことをやっていける高校生なんて、そんなに多くないはずです。何をすればいいのか…、菊池には可能性や選択肢がありすぎて、迷っているだけのようなので、それを促すのが指導者である大人の役目なのでしょう。映画部の顧問のようでは困りますが…。
それにしても、前田の運動オンチはかなりなもので、あのサッカーの空振りは神技レベルでした。