アニマル泉

脱獄者の叫びのアニマル泉のレビュー・感想・評価

脱獄者の叫び(1953年製作の映画)
4.2
ルイスは「水」の作家だ。本作はルイジアナの川、沼が舞台となりルイスの真骨頂である。波紋を引きながら泳ぐ、ボートやカヌーが水面を滑走する。木々ごしに川を滑走するボートを得意の横移動撮影で捕らえるショットが美しい。ヴィットリオ・ガスマンが川に飛びこみ、潜って、そこへバリー・サリバンのカヌーが来て、ガスマンが船ごとサリバンをひっくり返す、以上がワンカットで描かれて驚愕した。本作はルイスの後期の作品でワンシーンワンカットが多くなる。脱獄囚ガスマンと追う警官サリバンの物語である。冒頭の牢屋で激しい殴り合いになる。やがて疲れ果て、お互いの強さに呆れてサリバンがガスマンに煙草を勧める。マッチで火を点ける。ルイスのもう一つの「火」の主題だ。ハアハアいいながらセリフもなくしばらく二人は煙草を吸う印象的な場面となった。本作は何回か煙草を交わして火を点ける場面がある。「火」が友情や親近感を見事に具現化している。この殴り合いがクライマックスの川の中での殴り合いに繋がる。そして底無し沼にはまったサリバンとガスマンの対峙というクライマックスになる。捜索隊に自分達の居場所を知らせるのも焚火である。
ガスマンの護送場面、まさかの追突事故になる。フロントガラスごしの追突、恐怖のアップ、時間をジャンプしてトンネルから逃走してくるガスマンがそのままワンカットで急坂を駆け上ってケーブルカーに飛び乗る、この躍動感が素晴らしい。
逃走するガスマンの列車を待ち構える場面、一直線の線路の見事な縦構図、停止させた列車の捜索と逃亡が面白い。
ミートローフしか作らないポリー・バーゲンが可笑しい。ガスマンの息子も可愛い。ガスマンの妻と息子は一緒に隠れて逃げようという話だったが後半出なくなってしまった。どうなったのだろうか?
サリバンの夢の場面がある。ルイスは動物が好きだが本作ではワニが襲ってくる。サリバンと同僚刑事のウィリアム・コンラッドがお互いに張り合っている設定になっていて、サリバンとガスマンのラインと交錯する構成になっている。MGM。
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