南森まち

Kids Return キッズ・リターンの南森まちのレビュー・感想・評価

Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)
4.3
シンジは偶然会った同級生と、昔のように自転車の二人乗りをする。そして物語は、不良だった高校時代に戻る…というお話。

面白かった。ヤクザをカッコよく描くキタノ作品群は好きになれなかった。しかしこの若者の成功と挫折を描く青春劇にグッときた。結局ヤクザは出てくるんだが…😅

表紙にもなっている二人乗りシーンを知っていたので、この二人の話だと思っていたのだが、脇役達にも光が多くあたる群像劇。
特に、二人とほぼ関係のない、ただ同じ喫茶店にいるヒロシの顛末が印象的。二人と違っていわゆる一般的なサラリーマンになる彼も、やはり成功と挫折に見舞われる。このキャラクターがいることで、彼らの挫折が「一般人に縁のない世界」ではなく、同じようなことが自分たちにも起きる地続きの世界だということが理解しやすい。何ならマサルよりもたくさん描かれている。

この映画のいいところは、群像劇をわずか106分に収めているところだ。なにより二人の主人公の片方のストーリーを、思い切ってバッサリカットしたのは英断だった。ただ、ジムの関係者は多すぎたと思う。ハヤシとイーグルと会長とシゲさんだけで充分だった。それ以外は文句ない。

あとは音楽がめっちゃいいですね。ジブリ作品のような久石譲特有のどこかのんきな雰囲気を醸し出していた。ヒリついた雰囲気のこのストーリーにはあう音楽ではないが、使いどころを変えることで若者ののんきな青春の色を描き出していた。

自分の人生にモヤモヤしている人にオススメです!