けー

クロッシングのけーのネタバレレビュー・内容・結末

クロッシング(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

多分はじめてリチャード・ギアがちゃんとカッコよく見えた。

舞台はブルックリン。後7日間で退職の制服警官エディ、ギャングに潜入中の刑事タンゴ、家の壁のカビが原因で奥さんの喘息が悪化し新居に引っ越ししたい麻薬捜査課の刑事サル、この3人がおりなす一週間の物語。

Police Brutality で真っ先に槍玉に上がるのが現場に身を置く人たちだけれども、なんともかんとも複雑な気持ちにさせられる。

イーサン・ホークが演じていたのが引っ越しのための頭金が必要で追い詰められていくサル。

危険な仕事をしながら、健康被害の心配のない家に引っ越しすることもできない経済状態。 思わずお金をうまくくすねられますようにと願ってしまったぐらいだ。

「トレイニング・デイ」でアロンゾの思惑通りにはならなかったジェイクだけれども、あれは麻薬捜査課に着任してたった1日目のこと。

この映画は「トレイニング・デイ」の続編というわけでもなんでもないけれども、なんとなくその後ジェイクが辿ることになった顛末というように思えてしまう。

サルのようにならなくても、タンゴのようなことになっていた可能性もあるし、エディになっていた可能性もある。

私がこれまで見てきた映画はストリート側の立場からの視点で見ることが多かったけれども、この映画では警察機構のピラミッドの最下層部で起こっていることを垣間見ることができた気がする。

槍玉に挙げられるわりに甘い汁が吸えているわけでもない。生活が守られているわけでもない。
それに心の問題も大きい。
警官になることを志したぐらいなのだから元々正義感は強いはずだ。
その正義感の強さが仇となって命を落とすか、どこかで自分を曲げて面倒に巻き込まれないように過ごしたとしても、もう生きていく意味も気力もエディは見出せなくなっている。

うろ覚えなので数字に自信がないがエディは勤続22年。

で、退職の手続きでバッチを返却した時に箱にポンとそのバッチを投げ捨てられるのが結構ショッキングだった。

役に立たなかったと散々上司から蔑まれるが、そもそもそういう職場環境となってしまっているのは何が原因なのか。

退職した後でエディは売春させられていた少女たちを単独で救う。
本当はずっとこういうことがしたかったのだろう。

そのスキルも勇気も持ち合わせていた人だったのに、いつの間にか全てに目を瞑り、関わるまいとしてきた。あまりにもひどい現実の有り様を見続けてきたそのことで完全にすり減ってしまった。そしておそらくは、自分が警官になった時のDay1には一番自分が軽蔑していたような生き方をする警官になってしまった。

タンゴとキャズの関係も難しい。

頭ではわかっていても簡単に割り切れるものではないだろうし。

潜入捜査ものドラマや映画では対象に近づきすぎて相手に共感してしまいというパターンはよくあるが、グッと気持ちを強くして職務を果たそうとしたとしても、その手法に「理不尽」が含まれすぎていれば、心が引き裂かれてしまう。

どっちの道を選んだとしてもタンゴの心が晴れることはなかっただろうし、なんというか自分の幸せを犠牲にして、そしてその見返りがこれでは....。

自分が選んだ仕事だろうといえばそうかもしれないけれど、それでは何一つ事態は解決しないし改善しない。
同じ不幸を繰り返す前にやはりどうにかするよう動いていかないととは思うのだけれども。

ピラミッドも下の土台がなければピラミッドになれない。

それともあれか下層についてはExpendableでいいみたいな? Replaceableだから...。

でもそれを言ったらピラミッドのどこにいようとReplaceableであることには変わりないんだから。

うううんんん。(←落としどころ迷子になったらしい)

なんとかならんものなのかねぇ.....。



それにしてもイーサン・ホーク、迫力ありました。

あとスナイプ兄さんには逃げ延びて欲しかったー😢
けー

けー