たく

渇望のたくのレビュー・感想・評価

渇望(1949年製作の映画)
3.5
男女の愛の不毛を描くベルイマン監督1949年作品で、話があちこち飛ぶ構成がちょっと分かり辛かった。妻の精神不安に手を焼く夫という図式があるあるな感じで、それでも一歩踏みとどまって一緒に居続けるというのが夫婦本来の在り方なんだと思わせる。本作は女性特有の不安にスポットが当てられてて、男性にとってはちょっと耳の痛い話に感じた。

バレリーナのルートが恋人の男性に妻子がいることを初めて知らされてショックを受けたところに、妊娠した子を堕胎させられるというダブルパンチを食らう。この経緯を踏まえた現在の夫との暮らしはルートにとって不安に満ちたもので、常に夫と口論を繰り返すメンヘラな様子には、どんなになだめても相手の不安や不満が収まらないというのを自分も職場で経験しているので見ちゃおれなかった。ここから急にカウンセリングを受けてるヴィオラに場面が切り替わるのが唐突で、なかなか話が繋がらなくて戸惑ったんだけど、どうやらルートと同じバレエ教室に通う女性らしく、精神不安を抱えてるという点ではルートと同じだった。

ヴィオラがかつてバレエ教室で一緒だったヴァルボルイに偶然出会い、自宅に招かれるところで、どうやらヴァルボルイがレズビアンらしいことが匂わされて、彼女も同性愛が一般に認められてないだろう社会での暮らしに不安を抱えてるということなんだろうね。人生に絶望したヴィオラの入水自殺が暗示され、ルートが夫と電車の旅をする間にもやっぱり口論が絶えず、ついに夫が夢の中でルートを殺してしまうあたりが怖い。それでもこの困難を乗り越えて一緒に生きていこうとする幕切れはジーンと来る。
たく

たく