ろく

僕達急行 A列車で行こうのろくのレビュー・感想・評価

僕達急行 A列車で行こう(2011年製作の映画)
3.5
森田芳光ウィーク、ラストは遺作となるこの作品を。

あれだけコミュニケーションに拘り、時に揶揄し、さらには挑発し、あるいは抒情的に描いていた森田の行き着く先は「なんにも起きない優しさ」だった。それは映画としてはあまりに優しすぎるのかもしれないけど、森田という人物の行き着く先が「優しさ」だとしたらもう喝采しか出ないだろう。

いや出てくる人は皆「いい人」すぎるのよ。みんな、他人を信用し、信頼し、あるいは頼りにし、また頼られる。いや平成の末にこんな映画でいいのかと思っていたけど、この清々しさって1950年代の日本のコメディなんだよ。だれもかれも悪いことがない優しい世界。そうか、森田はそこの境地にいったのかとひとりごちです。

瑛太も松ケンもとにかく清々しいの。増村の「青空娘」の男性版でないかいって思うくらい。観ているこっちが申し訳なくなってしまうくらいの清々しさ。穿った映画マニアはもう紅潮してしまうくらいの展開なんですよ。

さらに自分が鉄道好きなんでその点でも少し加点(まあ僕は駅鉄なんで車両はそれほど興味持たないんだけど)。鉄道好きが随所に込められているのでそれは嬉しい。

最後まで清々しいままこの映画は終わるんで心が浄化されたい方はどうぞな作品かな。あまり穿った見方してしまうと突っ込みどころは多いからそこは内緒だぜ(後半はご都合主義の連打になる)。

森田の最後がこれってのは良かったのか悪かったのか…僕は良かったと思っている。最後は誰も許してしまう森田がいた。そして涅槃へ、ほんとお疲れ様でした。でももう少し見たかったよ……
ろく

ろく