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泥の河のryosukeのレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
4.1
徹底したリアリズムと的確な心情描写、安定したカメラワークとクオリティの高い秀作。言葉では多くを語らず目線と表情で感情を表現する演出は素晴らしい。特に小役達の演技には舌を巻く。うどん屋、橋、川、船という舞台も効果的に使われていた。
加賀まりこはなかなか姿を見せずじらされるのだが、その分登場時のインパクトや彼女の美しさは際立っていた。
80年代の作品だがあえてモノクロ・スタンダードサイズにすることで、当時の空気感を再現していた。全編に渡って重苦しく、もの悲しい雰囲気で、劇的な演出は用いずにひたすらリアリティを追及した作品なので、見ていて楽しいとは言い難いが迫力のある映画であった。日本版ネオレアリズモとでも言えるような趣がある作品である。
音響があまり良くなく、若干会話が聞き取りづらいシーンがあるが、それも50年代日本映画風に仕上げるという意図によるものなのかもしれない。
ラストのシークエンスは若干単調に感じてしまったが、全編に渡って抑制された演出を徹底したとも言えるのだろう。
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