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アスパラガス/スーザン・ピット ドールハウスの魔法のakrutmのレビュー・感想・評価

4.0
アメリカのアニメーター・画家であるスーザン・ピットの代表作と呼ばれる短編アニメ映画。ニューヨークやロサンゼルスで、デヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』とともに2年間にわたって深夜上映され、カルト的な人気を博したそうである。

台詞のないアニメーションなので、短編映画と言うよりは、映像アート作品と呼んだほうがよいだろう。サイケデリックな色彩で描かれたシュルレアリスム的な、不思議な映像でありながらまったく意味不明というわけではなく、いくつかのシーンにまとまっている。人形劇のようなセットでの映像とアニメが融合されている部分もあるなど、芸術的にも優れている。

作品のタイトルになっているアスパラガスは、いくつかのものを象徴する装置として用いられている。主人公の女性がトイレでアスパラガスを排泄する冒頭のシーンから強烈であるが、最も多く使われているのは男根の象徴としてである。男根を象徴するにはちょっと細すぎる(笑)ような気もするが、逆に、そんなアスパラガスを女性が(男根を愛撫するように)掴んだり口淫したりするショットを用いて、男性優位社会(家父長制)を嘲笑しているという解釈ができるだろう。

また、主人公の女性はそれらのシーンを部屋の中から見ているという点で、その女性が居る部屋(家)はフェミニズム的な平等社会を示しているようである。その部屋にある不思議なグッズたちを持ち出して劇場の舞台裏でぶち撒けるシーンも、フェミニズムによる男性優位社会への抵抗を示しているとも言える。さらに、主人公の女性の顔が描かれず、のっぺらぼうのままであることは、そのようなフェミニズムから距離を置く作者(=スーザン・ピット)の心情が表現されているかもしれない。

そんな様々な解釈が可能な映像であるが、そういう難しいことを考えなくても、話のネタとして、この18分の映像を一度見ておいてもよいだろう。
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