デニロ

悪の階段のデニロのレビュー・感想・評価

悪の階段(1965年製作の映画)
4.0
1965年製作公開。原作南条範夫。脚色監督鈴木英夫。

ヒロインが団令子だってンで、そのつもりで出かけたのですが、え、この人団令子?そう見えないこともないけれど、お顔がシュッとしてなんか調子狂う。ケラケラ笑わないし。冷たいまなざし。前年、牛を殺した影響か・・・。

同じ建築会社に勤務する山崎努、西村晃、加東大介、久保明の四人。知恵袋山崎努の計画に則り強面、運転手、溶接とそれぞれの役割を果たしながら金庫破り。手始めに表向きはキャバレー、裏では麻薬取引の場を襲う。万事快調で現金を盗みだすが、もちろん、麻薬の金が盗まれたと警察に届け出るはずもない。今後の麻薬取り扱いに差しさわりが出るから。よし、山崎努の計画通りに進行し、金庫破りの本丸は4,000万円の給与略奪。奪った金は等分するが半年間は眠らせると合意。ねえ、わたしの役目は何なの、と山崎努の指示を待つ団令子。ふふふ。地下室にある二個の金庫をよーく見ておけ。

金庫破りよりもその後の人間模様に力点が置かれる。というよりも、山崎努が仄めかすその後の計画を描いていくのです。

加東大介は勤務先の社長車の運転手。社長の妾宅から社長を羽田空港に送るその帰り道、見送りに同乗していた妾久保菜穂子に、社長は他に何人女がいるのと問われる。そして、銀座にお店を出したいのにあのケチお金出してくれないのよ、他にも女がいるんじゃねぇ、と愚痴られる。女性関係ではおそらく不遇な加東大介。あなたみたいに美しい女性になら200万や300万出したって惜しくない。例の分け前の金がちらついてついつい、田舎の田んぼの土地を売り払う話が出ていて、それを売り払えばそれくらいの金は、などと口走ってしまう。なんと、次のシーンは、そのふたりがベッドで情事の後の寝物語。すっかり久保菜穂子の悪魔的なからだに狂わされてしまっています。お金いつ出してくれるのよ。/売買の手続きに時間がかかって。半年後には。/お店を出すにも時期ってものがあるの。すぐに出してよ。/そ、そんな。/あなた出せないなら、他のパトロンに頼むわ。/そ、そ、、、そんなこと言わずに、あんたが欲しいんだ~。すぐに500万なんとかします!/

山崎努のことですもの、他の三人のことなんか端から勘定になんて入れていません。利用するだけ利用したら後は棄てるだけ。人間の欲望というものをよ~くわかっている超人のような人なんです。意図せざる方法で次々にいらなくなった者共が殺されて行きます。尤も殺されて行ってしまうことをみるにつけこの計画はおじゃんだろう、と凡人のわたしでも思うのですが、製作者はごり押しで突き進んでいきます。古今犯罪映画の常道を踏んでいます。

で、珍しくクールビューティの団令子。横恋慕している久保明の狂おしい恋情に更に火を付けつつ、山崎努を置いて一緒に逃げようという切なる純情に応える素振り。いいわよ、山崎努なんてただの旦那よ、と言い放ちおんなの全部を曝して彼を誘惑したり、肉欲に悶える西村晃に凌辱されたりしながら、山崎努が猫のつもりで拾ってきた女が山猫に変貌していきます。

ラスト。一見のんきそうな巡査佐田豊の眼力により日本の警察力を見せつけます。

あ、よーく見ておけと言われた地下室の二個の金庫。何のことだったんでしょうか。

神保町シアター サスペンスな女たち――愛と欲望の事件簿 にて
デニロ

デニロ