Omizu

ある映画監督の生涯のOmizuのレビュー・感想・評価

ある映画監督の生涯(1975年製作の映画)
3.8
【1975年キネマ旬報日本映画ベストテン 第1位】
新藤兼人が師と仰ぐ巨匠溝口健二の生涯を振り返るドキュメンタリー作品。キネマ旬報ベスト1をはじめ、毎日映画コンクール監督賞にも輝いた。

とにかくインタビューされる面々が豪華すぎて。監督の伊藤大輔、増村保造、撮影の宮川一夫、俳優の田中絹代、入江たか子、京マチ子、若尾文子…

この世代の監督にはままあることだけど、たまたま撮影所に入ってたまたま監督の席につくようになった。それ故自分に近いものは描けるけど遠いものは描けない。途端に弛緩してしまう。

『楊貴妃』なんかが駄作になってしまったのはそれに加えて京マチ子のインタビューにもあったけど慣れないから細かく指示を出してカチコチになってしまったと。

代表作といえば今では『雨月物語』や『山椒大夫』だけど、本質は『浪華悲歌』や『赤線地帯』だというのも面白い。確かに『赤線地帯』や『夜の女たち』なんかの方がのびのびと撮っているような印象。

田中絹代との関係が周知の事実だったようだけど、田中絹代自身はスクリーン上での恋人だったが実際にはそんな関係ではなかったと言う。今監督としての田中絹代が再評価されているが、田中絹代の芯の強さが垣間見えて良かった。

インタビューや映画のタイトル、抜粋したシーンを繋ぐ標準的なスタイルではあるが、愛憎入り交じる溝口健二に関するインタビューだけで十分面白い。
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