安堵霊タラコフスキー

鏡の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

(1974年製作の映画)
5.0
タルコフスキーの映像芸術をとっくり味わう為の映画。

wikipediaに書かれているような解釈は確かにできるんだろうけど、そんな小難しいことを抜きにしても草原を吹き荒ぶ風に燃え盛る小屋にといった心が震える映像詩的描写が立て続けに見られるので感動せずにはいられない。

しかもこの作品はカラーとモノクロがちょうど半々の割合になっていて、一部ドキュメンタリー映像の引用となってはいるけれども白黒の映像美もカラフルな映像美も両方堪能できるのが嬉しい。

この作品においては展開を覆うとすると混乱してしまうかもしれないけど、むしろ中原中也の羊の歌やランボーの地獄の季節のような詩集の映画版として見ると素直に作品の良さがわかるように思える。

そしてこれは他のタルコフスキー作品についても言えることであるが、もしこの映画を見て光と色彩の美しさに心打たれないのであったら、そのときは映像を単なる物語を理解する為の情報としてしか見ておらず真の意味で映画を見ていない可能性が高いので、そんな人がいたらもっと映像や描写それ自体を堪能することを勧めたい。