<概説>
首領が死のうとも抗争は終わらない。
裏切り者の内通者に課された次なる任務は、自身と出自を同じくする内通者のあぶり出しだった。善人になりたいと願うラウは自身の正体を隠しきり、無事にこの任務を果たすことができるのか。
<感想>
たしかに煩雑。
たしかに難解。
しかしこれ以外の結末があり得るのか。
それほどまでに私は気に入りました。
これまでの盤面をひっくりかえされたようなストーリーですから、賛否あるのはわかりますけれども。
そも本作はサクセスストーリーではありませんよね。
第一作の時点で無間地獄が作品テーマにありましたから、最終章の時点でラウが無間に堕ちているのは明々白々。
ならば最終章の主眼はその無間地獄にいかに結を付けるかであり、ビターエンドにしかなりえないのも同様に明白だったのです。
「善人になりたい」
ただこの願望までも無間に叩きこんだのは見事としか。
善人になりたいのではなくて、善人はそも善人なのだと。
いかに改心しようとも過去は貴様につきまとうぞと。
ひたすら善人であり続けた人々にそれを突きつけられるのは、いやあもう鳥肌が立ちました。なんたる性悪な脚本。
そしてこの善人の善人らしさによって、善人の会談には涙が出てきます。ヤンにしても本作の主人公にしても、あんな優しげな笑顔を浮かべたなんて。
難解だからと低評価にするのは甚だ惜しい。
やはり私はこれがシリーズで一番好きです。