真田ピロシキ

フォーガットンの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

フォーガットン(2004年製作の映画)
4.5
史上最高に笑った映画。当時映画館で見てあまりの笑撃に涙を流して声を出さず笑うのに苦労した。

「シックスセンス以来最も衝撃的なスリラー」と適当な事を嘯かれている本作ですが、冒頭のビル街を俯瞰で捉えたカットから公園に移るあたりでは不穏な雰囲気が満ちてて、キャリアを投げ売ってるのかと思ったジュリアン・ムーア様の演技もかなりキテて、彼女を信頼できない語り手にしたサイコスリラーにでもしてたのなら真面目に傑作たり得たかもしれません。

しかし何を思ったか製作者が選んだのは『X-Files』なんだよモルダー。しかもさほど悩みもせずに宇宙人の陰謀説に辿り着くジュリアン様。やっぱり危ない人にしか見えない。モルダーならもう少し疑う。スカリーみたいなツッコミ役の不在は大きい。それでこの宇宙人さん、存在を知る数少ない人間がとても叶わないと恐れ慄いている割に仕事がとても杜撰。中途半端に息子の痕跡残してるし、元ホッケー選手の家の壁紙はちゃんと貼ってないし、飛行機事故の隠蔽にしたって新聞記事にまでなったものの記憶を完全消去するなら直接関わりのある人間だけでなく不特定多数の記憶まで消さないといけないわけでどういうカラクリなのやら。特定の記憶だけ消せるご都合主義ビームでも撃てるんだろうか?黒幕宇宙人(平社員)はイレギュラーな事態に困っていたが、それは単にこんな雑な仕事しかできないあなたの能力不足なのではとばかり感じてくる。そりゃあ飛ばされますわー(文字通り)

そうそう、この飛ばす表現が最高の爆笑ポイント。最初こそ暗い所でよく見えないまま行われるので宇宙人驚異のテクノロジー感が出ているが、2回目以降は開けた所にスペースダイソン掃除機発動!シュールだ。しかも人がいる街中でも発動するのできっと目撃者が少なからずいる。見られた人間の記憶も消せば良いと考えているのだろうか。そんないい加減な考えしかしないから余計な仕事が増えるし失敗するんですよ。映画にはシュールな笑いを提供してくれる様々なアホ宇宙人がいますが本作の彼はなかなかの逸材。

見る前は5点満点つけようと思っていたのですが、久しぶりに見てみるとお笑いポイント以外はただ退屈な時間が多くて91分しかない割に長く感じた程なので減点。初見のインパクトには及ぶはずがなかった。真面目に見ると3点がせいぜいであろう映画です。でも似たような話で同じクラリスのやっちまった映画であるジョディ・フォスターの『フライト・プラン』に比べると笑い飛ばせるので良いですよ。