ろく

ファントム・オブ・パラダイスのろくのレビュー・感想・評価

5.0
ぶらいあんでぱるま③

満を持してこの作品。

デ・パルマで一番好きな作品は?って聞かれたら躊躇なく「ファントム!」って言えるほど大好きです。何度見たか!何度泣いたか!

なのに東京の名画座ではロックオペラ映画との題目でロッキーホラーショーと二本立てでファントムを流しやがる。違う!違うんだよ!ロッキーはなんだかんだで「陽キャ」の映画なんだ(実はそんなに嫌いではないけど)。結局声出して騒げる奴がロッキーを好きなの。わかるよ、そんな映画だって必要だよ。認めるよ。ただね。。。。

ファントムと併映でやる必要ないだろうぅぅぅ!ファントムは陰キャのための陰キャの映画なんだよ。ファントムを見るたびに、ああこの映画が好きな人は悪い人はいないといつも思っている(実際は悪い人だらけのはずだけど)。基本デ・パルマは陰キャに優しい(それは前レビューのキャリーでも書いたことだけど)。よ、陰キャの気持ちをわかっているね、あなた!憎いよ憎い、デパルマくんってやつですよ。

何?まだファントムを見たことがない?それはあーた、人生を損しているってやつですよ。妬み嫉み嫉妬憎悪嫌悪、負の感情スパイラルの国際博覧会。もう最後のシーンでは誰に感情移入しても「こいつは死んでもいい」って気持ちになる。その一方で「でも死んでもいいって誰に向かって言っているの」って感じにもなるの。天に唾吐けば自分に降りかかっていく。90度の角度で投げられた投擲はそのまま自分に身体を貫く。ファントムに出てくるやつらはみんなお前らの化身なんだよ。

だって
結局自分のために全てがコマだと思っているスワンは「お前だ!」
自分の出世のために権力に阿き、抱かれてしまうフェニックスは「お前だ!」
自分しか好きでない、ビーフは「お前だ!」
そして怒りのためなら何してもいいと思い殺戮を繰り広げるウィンスロー・リーチ=ファントムは「お前だ!!!!!」

どいつもこいつもホントどうしようもないんだよ。でもこの映画はそんなどうしようもない奴らが溜まらなく愛しいと言うとこからできている。特にリーチ=ファントムの美しさたるや。音楽室にこもって作曲をするっファントムを見ろ!天窓からスワンとフェニックスの情事を盗み見するファントムを見ろ!スワンを殺すのにターザンばりにやってくるのにナイフをただ刺すだけというファントムを見ろ!そして最後の這いつくばって最後に……ああとにかくファントムを見ろ!

やはり僕はこの映画が大好きだ。

※久々にファントムを見たくなって探すと配信サービスであるのはDMMだけだった。結局DMMに入ってしまった。なぜこの名作を配信しない。世の中狂っている。そうだファントムに襲ってもらおう!そんな気持ちにさえなる。

※前半戦のコメディタッチも大好きだ。デ・パルマはたまに信じられなくくらい愉しげなコメディも流してくれる。「キャリー」なら服選びのシーン、「スカーフェイス」なら結婚生活のシーン。適度に楽しいので嬉しくなってしまうこと必定である。

※必ずって言っていいほどデパルマの映画にはサイコオマージュが出てくる。いつ出るんだろうと楽しく待って見てしまう。登場人物がシャワーを浴びるときはその合図だ。今回はビーフ。お前かーいってつい突っ込んでしまう。
ろく

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