ユースケ

ドライヴのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

ドライヴ(2011年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

愛を知った孤独な一匹狼は、愛する者を守るため、秘められた狂気を解き放ち、殺人マシーンと化す。

プロの仕事っぷりを見せ付ける一切無駄のない逃走劇を描いたアバンタイトルから、シンセサイザーの効いたエレクトロ・ミュージックが流れ、艶かしいロサンゼルスの夜景にネオン・ピンクの筆記体でタイトルが書き出されるタイトル・ロゴまで、シビれっぱなし。
計算し尽くされた画面構成や細部へのフェティッシュなまでのこだわり。セリフを極力排除し、映像と音楽だけで物語を描き切ったニコラス・ウィンディング・レフン監督のセンスにメロメロ。キメ過ぎてダサいが一周してかっこいい。これぞダサかっこいいの極致なり。

主人公にサソリを背負わせる事で、オーソン・ウェルズ監督の【アーカディン/秘密調査報告書】で語られたサソリとカエルの寓話やケネス・アンガー監督の【スコピオ・ライジング】で使われたポップ・ソングに主人公の心情を代弁させる手法を匂わせたり、エンジンの心臓部であるキャブレーターを修理させる事で心に受けた傷を表現したり、間接的な表現に徹底的にこだわった巧みな演出も秀逸。クライマックスの殺し合いまで影で見せる徹底っぷりには脱帽です。

更に、冷静さの裏側に一触即発の暴力性を秘めた主人公のドライバーを演じたライアン・ゴズリングをはじめ、キャリー・マリガン、オスカー・アイザックなど、キャラの立った人物造形とカチッとハマったキャスティングも素晴らしい。脇を固めるブライアン・クランストン、アルバート・ブルックス、ロン・パールマンの味のある顔をしたオヤジたちの渋みの効いた演技はたまりません。

とにかく、極上のロマンティックと狂ったバイオレンスが同時に味わえる映画史に残るキスシーンは必見だし、80年代のプログレッシブ・ロックを現代的に解釈したエレクトロ・ミュージックが盛り沢山のサントラは必聴です。