“どっちが悪役か、わかるの?”
“サメだよ。サメは悪者で良いサメはいない。だってサメだもの。”
寡黙な天才ドライバーで「逃し屋」の主人公が、隣人の人妻と恋に落ち、彼女とその息子を守るため、借金取り立てのワルたちと戦う物語。
普通のヒーローものとは少し違ったヒーロー物語。
キリスト教的「自己犠牲」な愛のヒーローではあるものの、この物語のそれには普通の人間とは交われない悲しい運命がある。
カエルとサソリ、本能には逆らえない生き物。人間の本質は変わらないというディストピア感。
色の使い方がすごい。主人公と人妻は背景が常に違う。人妻の赤と主人公の青緑。
同じ部屋でも背景が違うし、赤い壁に掛かった青緑フレームの鏡越しに主人公が映るシーンは「おぉ…」と感動した。
音楽もいい。セリフも音も少なく、目線だけの恋愛感情の表現やドライブのシーンは、とてもカッコいい。
そして、音が少ないことで、台詞や音楽に意味が生まれるのも面白かった。
カーアクションものかと思いきや、そういうシーンは少ないし、逃し屋の逃し方も「隠れる」など、リアルかつかっこよくてとても良かった。
遅い展開から一気に加速する狂気性と残酷性、それに伴って強まる悲しみ。
目の話せないお話だった。
ただ、サソリ柄のジャンパーを着せたのは説明しすぎかもしれない。