風ノ助

さらば、わが愛 覇王別姫の風ノ助のレビュー・感想・評価

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)
4.5
近代中国激動の時代に京劇という特殊な環境下で育った蝶衣(ティエィ)は共に育った小楼(シャオロウ)へ想いを寄せる
虚構の世界の中でしか生きられなかった蝶衣と現実にいる女性菊仙と結婚してしまった小楼はすれ違っていく

京劇は中国の伝統的な戯曲の一つで「覇王別姫」は四面楚歌で有名な項羽と虞美人の別れを描いた人気の演目
国民に愛されていた京劇は、日中戦争、文化大革命と時代が変わるにつれて思想も変化し糾弾の的となる

京劇の虐待のような厳しい稽古、蝶衣の想い、菊仙への嫉妬、三人の愛憎が公衆の面前で曝け出されるシーン、虞姫として生きた最期
とても壮絶で悲しく美しい

中性的な妖しい色香を持つ蝶衣を演じ切ったレスリー・チャンも子役ちゃんも見事でした
小楼は子ども時代は良かったのに大人になってからは二人にあんなに愛される男としての魅力がいまいち感じられませんでした

蝶衣と菊仙の恋敵でもあり姉妹や母娘のような複雑な関係性にも惹かれます
時代が違えば蝶衣と小楼は愛し合えていたのかもと思います
風ノ助

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