風ノ助

13回の新月のある年にの風ノ助のレビュー・感想・評価

13回の新月のある年に(1978年製作の映画)
4.0
エルヴィラは究極の寂しがり屋さん
好きな男ができて妻子を捨て性転換手術を受けるがその人と付き合えない
新しい恋人にも捨てられる
性欲も上手く処理できない

劇中いろいろな人と出会う
対話するのではなくどちらかが一方的に自分自身のことであったりエルヴィラのことを語る

結構な長尺で流れる屠殺シーンは“精肉加工”と思えば見ることはできるけど映像が気になりすぎてエルヴィラの怒涛の一人語りの字幕を追うことができない

女性の服を着るエルヴィラはゴツくて骨太で似合っているとは言い難くどこか滑稽さを感じる
男性だった頃も女性になっても髪を切って男装しても居心地の悪さが付きまとう
 
家族に復縁を申し出ても深夜に知り合いを訪ねてもタイミング悪く拒否される
どこにも居場所がなく寂しくてとにかく誰かと話したい
自身のアイデンティティもぐちゃぐちゃになりどんどん追い詰められ絶望していく

ファスビンダーの自死した元恋人との生活を投影した内容なので行き着く先は最初から決まっている
最初から最後までずっと悲惨でエルヴィラの孤独と苦悩が全身に突き刺ささって来る凄い作品でした

ゲームセンターのお洒落な美術とテニスウェアのザイツとヘンな踊りするのがひとときの救い
風ノ助

風ノ助