こたつむり

点と線のこたつむりのレビュー・感想・評価

点と線(1958年製作の映画)
2.7
昭和33年。東京タワーが竣工した年。
未だ蒸気機関車が走り、禁煙と喫煙の区分が存在しない日本の片隅で、心中したと思われる男女の死体が発見された。地元の警察は心中と断定するが、実は社会を揺るがす汚職事件に結びついていたのだった…。松本清張氏の代表作『点と線』を映画化した作品。

僕にとってのミステリの原点。
それは、テレビ朝日系列で放送していた『土曜ワイド劇場』でした。印象的なオープニングと、小学生には刺激が強い物語性、そして次の日が日曜日という解放感。基本的には単発ドラマを流す放送枠ですから、週毎に違った雰囲気の作品を味わうことが出来るのも魅力のひとつでした。

しかし、その中でも。
やはり相性が悪い作品もあるわけです。それは男女の機微や情緒がねっとりと描かれたドラマ。そして、松本清張氏の小説をドラマ化した作品は…その傾向が強かったと記憶しています。

だから未だに。
氏の小説を手に取ったことはありません。僕が推理小説に求めるのは“奇想天外な謎”と見事なまでに“納得できる着地点”。申し訳ないのですが、男女の間に秘められた謎は門外漢なのです。

とは言え、本作に限って言えば。
氏の作品の中でもミステリ性が高く、時刻表トリックの元祖と伺っておりました。そして、某映画本でもお薦めされておりましたので、本作を端緒に新しい世界の扉を開くことができるのかも、と期待を込めて鑑賞したのでありますが…。

うん。
やっぱり、歳をとって変わるものもあれば、変わらないものもあるのですな。犯人探しが主眼でない物語はどうしても興味が持続しないのです。しかも、時刻表トリックについても…うーん。元祖ということでは歴史的価値はあるのでしょうけども“空白の四分間”を物語の主軸にするには線が細い気がするのですよ。

また、映画の完成度としても。
昭和33年の作品として評価すべきなのでしょうが…ちょいと現代の視点で観てしまうと厳しいものがありました。あ。でも、昭和33年の空気感が画面を通じて伝わってくるのは楽しかったですね。フィルムの保管状況もあるとは思いますが、全体的に茶色くなった映像から“昭和”の香りが漂ってきました。

まあ、そんなわけで。
『三丁目の夕日』を観た後に鑑賞すると格別の想いを抱けるかもしれないですよ。
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