マヒロ

ヒーロー・ネバー・ダイのマヒロのレビュー・感想・評価

ヒーロー・ネバー・ダイ(1998年製作の映画)
4.0
二つの組織にそれぞれ雇われた殺し屋のジャックとチャウは、お互い命を狙い合いつつも、どこか友情のようなものも感じている不思議な関係にあった。ある日、二人も大怪我を負うような大きな抗争が勃発したことをきっかけに、運命が大きく変わっていく……というお話。

一見ハードな裏社会モノのようで、ひとたび皮を剥いてみると素直になれない主人公ふたりの小中学生レベルの小競り合いにずっこけるヘンテコな友情物語だった。
プロの殺し屋同士のジャックとチャウだが、やることと言えば留守の間に家に入ってめちゃくちゃに荒らしたり、何故か直接言わずに共通の知人を介した電話で悪口を言い合ったりと、ガキかあんたらはと突っ込みたくなるような低レベルな争い。ようやく顔を合わせたバーでは何をするのかと思いきや、お互いの席に運ばれて来るワインをコインをぶつけて割り合い、相手に飲ませないようにするというはた迷惑なゲームを何を言うでもなく始めだす。仲良いんだか悪いんだか。
思えばだいぶ前に見た同じくジョニー・トー監督の『エグザイル』でもおっさん達がキャッキャ遊ぶシーンが出てきたし、これが監督の作風なのか。

ひょっとしてほのぼの映画なのかなと思わせられるが、やはり裏社会に関わる人間が呑気にしていられるわけもなく、中盤以降ガラリと映画の雰囲気が変わって来る。『上を向いて歩こう a.k.a スキヤキ』をバックに一度別れたジャックとチャウの運命が徐々に交差していく様をセリフ少なめに描いていくシークエンスはなかなかシブい。
そこから一転、最後の戦いではまたもやんなアホなと言いたくなるような展開が待っているんだけど、ここまで来るともう、とんでもなく不器用でカッコイイ男二人の運命を見届けるのみという心構えになっていて、そこら辺気にならなくなってくる。『ヒーロー・ネバー・ダイ』のタイトルも確かに納得できる、アツいラストが待っている。

(2019.189)
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