nekosuki

見えない恐怖のnekosukiのレビュー・感想・評価

見えない恐怖(1971年製作の映画)
3.8
叔父一家と暮らす盲目のヒロイン。
ある日帰宅すると静まり返った室内で全員が殺されていた。それに気づかない彼女は何事もなく朝を迎える。

いつものようにお湯を沸かしコーヒーを準備する。彼女が素足で歩くキッチンの床にはガラスの破片が散っていて踏みそうでヒヤヒヤした。

邦題は「見えない恐怖」。
対極に見える恐怖があるわけで、設定の妙を感じる。

ここまで映像に死体は出てこない。
実は一階には叔母、自室の隣のベッドには従姉妹、バスタブには叔父の死体があり、入浴のためにお湯を張り始めたところ恋人が訪ねてきて水栓を閉じて階下に降りたので気づかない。 

盲人は五感が研ぎ澄まされ、それらが目の代わりをするそうだ。これだけ人が死んでいて家中に血の臭いが立ち込めていると思うのに構成上ソコはスルーされている(笑)

映画の冒頭で犯人らしい男の首から下が映り、それ以降は👖と👢の足元のみに変わる。終盤まで犯人の顔を映さないカメラワークが見事。

タフなヒロインが犯人と格闘して撃退するストーリーではなく、か弱いヒロインが訳もわからず、ガラスで足の裏を怪我し、ぬかるんだ地面で泥だらけになりながら、ひたすら逃げ惑う。

“ロマ”と呼ばれる流浪の民がいて差別による抑圧が殺人の引き金になっているようだ。
劇中、差別を示唆する表現が随所に出てくる。
それにしても、殺人に至る直接的な動機は他愛もなかった。
nekosuki

nekosuki