皿鉢小鉢てんりしんり

機動戦士ガンダム II 哀・戦士編の皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

3.7
“富野節”、と言われているものがなんなのかはいまいち分からないが、テレビアニメベースの豊かとは言えない映像表現だと、むしろいちいち説明的なセリフを言うのは一つの作品テンポを作るのに貢献してると思う。
ランバラルが少年少女たちを前に「見るがいい、戦いに敗れるとはこういうことだ!」と言い放って投身爆発自殺を遂げるのとか、群像劇の醍醐味を感じる。
スパイだと気づきながらホワイトベースに女を乗せて、情があるから情報漏洩をなんとなく見過ごすカイの甘さも、いかにも少年兵らしくて良い。自分のしたことに動揺するミハルも未熟で、そして未熟さには必ず制裁が下る、という一貫性も凄まじい。富野由悠季という人は映像表現なんかより遥かに“テーマ”や“物語”を重んじる“近代作家”そのものといった印象を受ける。
“ニュータイプ”という言葉が何を指すのか、そもそも存在するのかも曖昧なのに、どんどん独り歩きして最重要概念になっていく過程のリアリティとか鮮やかだと思う。
ホワイトベースが優秀すぎてジオンに注目されてるから、むしろ囮専門として動いてもらおうと、大胆にトカゲの尻尾にする連邦軍上層部の異常な残酷さを描くラストも、子ども向けアニメとしての作り手の本気を感じる。