<概説>
仕事一筋の男のクリスマス。巨大な取引を期待して目を覚ますと、彼の隣には別れたはずの交際相手がいた。13年前仕事ではなく家庭を取っていたなら、そんなもしもの未来を彼は経験することになる。
<感想>
本作の家庭神話は時代錯誤な印象があります。
今の日本では男女共に仕事優先で、家庭の機能は外部に委託してこそ。自立しきった生活こそが幸福で、家庭に依存するのはおかしいという価値観がありますから。
けれどもこの反発を覚えることこそが、観客が主人公の立場にいることの証左なんでしょう。図らずも仕事こそ至上と盲信していることを、作品を通して観客に突きつけているのです。
実際現代を俯瞰してみれば奇妙なことは多々あります。
家族の暖かい食事は外食やコンビニ食に。
育児は男女が押しつけあった結果施設の仕事。
休暇は家族のふれあいではなく、仕事のための静養。
生活を豊かにするための仕事が、今では仕事を豊かにするための生活に逆転している。
勿論これは「金がない」という切実な理由から成っているのも事実。ただそれでもあまりに家庭がないがしろにされているなあと感じます。
本作はいつの間にか時代錯誤の作品になったのではなくて、むしろ時代毎の人間性を測る指標となったのかもしれません。