一体何を見てるんだ…?の気持ちになる映画だいすき オーストラリアの広大な大地をひたすら歩く制服ミニスカ白タイツの少女(フェチすぎる)と同じく制服半ズボンの弟、そして彼らの前に現れるwalkabout(原野で自給自足の孤独な旅をする通過儀礼)中のアボリジニの少年 少女と弟が大自然に投げ出される展開の手際のよさにもびっくりしたし、その後の途方もなさ、手元に唯一残されてるものが豊かな文明生活の象徴であるピクニックセットという皮肉とおかしみもぐっとくる 好きなSF近未来漫画セブンシーズにかなり近い、そしてその少年が現れてからはずっとマジックだった
このアボリジニの少年がアボリジニでないはずがない、このしなやかな身体、肌の質感、カンガルーを狩る鮮やかな運動そのすべてが彼のauthenticityを語ってる でもそうしたらこの作品は、この目の前で連続していくショットはどう撮影されていったんだろう??のはてなマークが頭の片隅をずっと占めていたので観たあと調べたらデイビット・ガルピリルという名のその少年はロケハンのためにオーストラリアを訪れていたニコラスローグにスカウトされた本当の先住民だった 茂みの中で生まれ、生まれ年も定かではないという彼は優れたハンターでありダンサーでもあったため、その伝統的なダンスがニコラスローグの目に留まったそう
その後の彼の人生もすごい オーストラリアン・ニューウェーブの皮切りともなった本作のヒットを受け、彼は世界中を巡業して女王陛下、ジョン・レノン、ボブ・マーレイ、ブルース・リー、マーロン・ブランド、ジミ・ヘンドリックスなど世界中のセレブリティたちに次々紹介されていく その過程で英語を少しずつ習得し、その後オーストラリアで最も重要な俳優のひとりとして多くの映画作品に出演する 共演者との友情を大切にしていく性格で、特にデニス・ホッパーとの交友は彼の死まで続いた 一方、本作の出演をきっかけにアルコールとドラッグを覚え、それから長年アルコール依存症に苦しんだ
YouTubeに彼の晩年のロングインタビュー動画があったので少し観てみたけど、語ることの喜び・身体がこの世の存在することの喜びが常に迸っているような語り口でくらくらした 本作で映された姿とは全く異なり、しつらえのいいグレイのスーツを着て訛りのある英語でジョークまじりにたとえば本作のラストについて語っていた(以下ネタバレ)
「僕は死にます、僕はマンゴーの木にこう(ぶら下がるジェスチャー)死ぬ 彼らは僕を下ろすこともなく去っていく あれはいまだに意味がわかりません 僕は彼らにマンゴーのようにもぎ取られることを予想してたのに」
撮影もすごくて、ジャケットになってる泉のシーンはもちろんだけど、3人が歩いている様子を追っていくカメラがそのまま茂みの中の野生動物にぎゅっとピントを合わせるショットがいくつかあって、どういうこと!?となる 動物とひととを別撮りで撮ってるんだな、て納得してたのにそこを崩してくるなんて そしてミニスカ制服の少女とガルピリル演じる少年の美しさの対比もよすぎる 太陽の下では美しいのびやかな生き物、という様子だった彼が家屋の窓枠によって隔たれた存在になった途端恐ろしく感じる、その映像的な説得力も 求愛が叶わなかった彼がなぜあんな風に死んじゃうのかはわたしにもわからなかった