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美しき冒険旅行のひのレビュー・感想・評価

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)
3.6
大地の悠然さ、生命の輝き、アボリジニの躍動感、
オーストラリアでしか目にすることができない景色に感動させられながら、最後にはすこし胸糞わるく感じるエンディングだった。映像とストーリーのギャップに困惑した。

主人公の少女の言動には、無意識に原住民を見下す意識があったようにおもう。頑なに英語しか話さないこととか、彼らは白人に会ったことがないというような言い草も。実際にはすでに白人が入植していて、アボリジニを商業的に利用しているという現実の暴力性に気づいていない。
弟の異文化コミュニケーションの柔軟さに比べれば、少女の意識に堆積した偏見が無邪気なものではないことも分かる。そこには西洋側の自己弁護が透けてみえる。

さらに少女は自然の洗礼を受け、アボリジニに命を救われていながら、結局少年には別れも感謝も使えることなく元の生活に戻ってしまう。たまに思い出すだけで、それ以上はない。アボリジニの生き様を「旅行(観光)」として消費する図々しさとして映る。
ひるがえって視聴者として消費するわたしにとっても、決まりの悪さとして尾を引いた。制作者たちがアボリジニを無下にしているとは思わないけど、近代社会の優位性をなお疑わない我々の浅はかさが静かな怒りとなって残る映画だった。

冒頭と最後に、「賭け」について言及するナレーションがある。あれはおそらく大人になった弟の言葉だとおもうけど、何についての「賭け」なのかな。個人的には少女がオーストラリアに残るのか否かについてだと思ったり。
ひ