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春秋一刀流のkossのレビュー・感想・評価

春秋一刀流(1939年製作の映画)
4.0
空のカット、「雨が降る。血の雨が降る」の字幕に始まり、喧嘩に向かう両一家が左右にカットバックされる。喧嘩で向き合うとカメラが引き、街道を走る横構図、大樹の下の恋の語らい、平手造酒の日誌である字幕は多用されて物語を導き、短いカッティングと編集がサイレント映画のような動的リズムを生み出す。

天保水滸伝を引用する物語は、身投げの娘を助ける用心棒たちの出会い、親分との報酬交渉、恋による一念発起、用心棒稼業の見切り、道場建設を夢見る三人と、義理人情が存在しない時代劇のパロディであり、現代的時代劇である。

サイレント映画のような編集とリズム、現代的時代劇の物語。丸根賛太郎のデビュー作は明らかに山中貞雄の影響が強い。だが、丸根はあくまで独自の領域を創る。喧嘩で死ぬ仲間、平手造酒の病気など暗い項目は強調されず、世間に縛られない自由さ、清廉ともいえる明るさと楽天性、群れをつくるアクションが連続する運動を見るように心地良いのだ。
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