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喜劇 日本列島震度0のkossのレビュー・感想・評価

喜劇 日本列島震度0(1973年製作の映画)
3.6
前田陽一の定番である会社からの命令企画。ベストセラー「日本沈没」、「ノストラダムスの大予言」とその映画化の東宝のパニックものへの対抗を任される。そこで前田が繰り出すのは大掛かりな特撮や騒乱ではなく、人間たちのダークサイドを暴露する非倫理と非道徳、崩壊の変奏。

非倫理と非道徳は、ナマズより下の海抜ゼロメートルの東京江東区のほんわかだが実は自己中心な住民、仕事をしない地震対策室の公務員たちの汚職、公務員と癒着する金貸しと防災用品の不正納入、清らかな占い師が実は金貸しの愛人、ウエディングドレスとモーニングで競輪場と並べる。

崩壊は、地震予言日の避難の住民たちの拒否で自治会は分散、公務員たちの逮捕で地震対策室と区役所の信頼失墜、憧れの女性の裏面。東京都八丈島という一部で地震が発生するという皮肉。「ちんころ海女っこ」に続く八丈島では歴史的景観の玉石垣を崩してみせる。

一見、ゆるゆるでまとまりない喜劇のようだが、ダークサイドの暴露とパニックを風刺する前田陽一の批評精神と非倫理と非道徳はやはり面白い。
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