OASIS

ペルセポリスのOASISのレビュー・感想・評価

ペルセポリス(2007年製作の映画)
3.7
1978年に起きたイスラム革命に翻弄される少女マルジャンの姿を描いたアニメ映画。

思想の違いによって生まれる紛争をモノクロで描いていて、銃殺や爆撃、空爆シーンの惨状を煙でぼかしたり紙芝居風な止め絵で見せたりする事で重くなりがちなテーマを比較的ライトで観やすいものにしていた。

「アイアン・メイデン」に夢中になる少女の姿や政府に隠れて夜な夜なパーティをする様子等、狭苦しい環境から隠れながらも自由を求めて僅かな時間だけ心を解放させる瞬間をユーモラスに描いていて良かった。
戦争から逃れてヨーロッパへと移住しその先で住居を転々とし放浪生活を送る場面、少女が大人へと成長する表現等はアニメならではの表現が活きている。
ヨーロッパ文化に馴染めず故郷へ戻り、幼馴染と再会しうつ病になる展開の暗さも、これが実写だと観るのはかなりキツい。

後半で主人公がするある選択に関しては祖母の「いつも公明正大に」という教えとは真逆な部分なので若干彼女にイライラしてしまったが、祖母と少女の会話の場面が最後に聞こえる所でグッと来てしまった。
あのお婆ちゃんだけは最後まで教訓を貫いていて、彼女の存在が無いと深みも生まれなかっただろうと思う。

絵自体は非常にシンプルで、黒いベールで覆っている状態だと誰が誰か区別が付きにくかったが、それは女性が一個人として認識されていなかったという部分を表したものだと思われる。
そんな女性達がパンクロックに憧れて弾ける様子が、抑制された生活を送るが故により際立って美しく見えた。

「ゴジラ」や「ターミネーター」等の映画が白黒アニメで表現されているのはなかなか面白いし、コミカルな描写が割りと多めなので観やすいかと思われます。
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