アニマル泉

影なき声のアニマル泉のレビュー・感想・評価

影なき声(1958年製作の映画)
4.2
松本清張の短編を鈴木清順が映画化。清順はミステリーが不得意だと思う。論理立てて真相に迫っていくのが上手くない。編集が変なのだ。決め手となるカバンのくだりもいきなり少女がカバンを持って走るショットか挿入されるが前後の流れからは意味不明だ。イメージショットのような突然の挿入は混乱する。物語の流れも突然切り替わる。編集をやり直せば本作はもっと解りやすくなるだろう。
南田陽子が電話で犯人の声を聞いたというモチーフが尻切れとんぼなのも惜しい。南田陽子の安アパートのセットが面白い。部屋の窓外は隣りが丸見えで、奥が共同便所の廊下を南田が恐怖で走り回る、各部屋を窓外から横移動撮影する。本作では横移動撮影が頻出する。縦や高さという清順得意の主題は貯炭場で落下する機材ぐらいだ。回想場面は斜めアングルになる。
「水」の主題は、犯行日の雨、風呂場に水没するマリ(石塚みどり)の死体の幻影などだ。
芦田伸介が不気味だ。清順映画の芦田伸介は本当に怖い。何を考えているかわからない狂気を発散している。宍戸錠はチンピラであっさり殺される。清順映画では珍しい。野呂圭介が活躍する。音楽は林光、助監督は武田一成。白黒日活スコープ。
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