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レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカのSPNminacoのレビュー・感想・評価

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『真夜中の虹』に続き、この頃のカウリスマキ映画で希望といえば「行けばなんとかなるだろう(根拠はない)」。で、「アメリカならなんとかなる」と言われて行ってみると…意外となんとかなっちゃうのだった。そこでは来る者は拒まず、案外と優しい。
とはいえ、どこにいても彼らの世界はそのまま。持てる者と持たざる者がいるだけだ。メキシコへと旅するバンド一行はお客にウケず、搾取するマネージャー(マッティ・ペロンパー)は金も食い物もビールも独り占め(犬には優しい)。トサカやトンガリブーツ、声を持たないイゴールは一人ぼっちで追いかけるしかない。
道中には革命もあるし、ほんの一瞬ロマンスもあったりするが、別に変わらない。乗り換えてもキャデラック。目指す所は一緒、一人だけ贅沢は許されない(但し予め氷漬けのメンバーは、最も大事にされてるといえる)。ただ、アメリカ音楽の聖地を通過するバンドは、R&Rからマリアッチまで貪欲に吸収し、トラクターで畑を耕すようにレパートリーを開拓していく。バンドであり農民だから。
奇遇な縁で旅の仲間は増え、最後には奇跡もある。捨てる神あれば拾う神あり、蘇る者あれば去る者がいる。アメリカでもメキシコでも、なんとかなるもんだ。相変わらず陽気な演奏を続けるレニングラード・カウボーイズは、そもそも誰よりもR&Rな奴らだ。どのギグも普通にカッコよかった。
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