映画漬廃人伊波興一

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

4.5
アキ・カウリスマキの『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』を公開から30年近く経た2018年に初めて観る体験。

その存在に無意識だった訳でもないのですが何故か公開当時に自分の気付かぬうちに傍らをすり抜け今更ながら観てみると(脇の甘さ)に自嘲気味になってしまうような映画〜カウリスマキの『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』は私にとってさしずめそんな一本です。

そんな作品について何かを語る時は常に(今更)という前提が頭をもたげ気恥ずかしい限りですがやはり1989年にて既に来るべき新世紀の映画の在り方を示唆していた痕跡を認めると黙っていられなくなります。

『愛しのタチアナ』『ル・アーブルの靴みがき』などを先に観てしまった者にとって今更、バンドマンたちの野遊びのような風景に驚きもしませんし、
『ラブィ・ド・ポエーム』を先に観てしまえば今更、ジャームッシュがさりげなく出演している幸福も彼の映画なら充分にあり得るだろうと思えてきますし、
『コントラクト・キラー』を先に観てしまえば、今更ながらの魅力的な無国籍世界。
『罪と罰』『過去のない男』『浮き雲』を先に観てしまえば、今更ながらの愛しき人生の崖っぷちぶり。
『マッチ工場の少女』を先に観てしまえば今更ながらの天性のブラックユーモア。
そして『希望のかなた』を先に観てしまえば、と続ければ何故、公開当時にしっかり観ておかなかったんだ、と(今更)ながらに自身の怠慢さを嘆くばかりなのであります。