黒人俳優の道を切り開いた先駆者でもあるシドニー・ポワチエ。
彼の彼である所以=気品、誠実、信念が、この作品では溢れている。
まだ黒人差別が今以上に強かった頃、黒人男性と白人女性の2人の結婚と、両親たちの葛藤を描いている。
シドニー・ポワチエは世界的に名の知れた医者役で、恋に落ちた白人の彼女の両親に挨拶に行くところからドキドキする。そのドキドキは本作が元ネタの「ミート・ザ・ペアレンツ」の比ではない。
娘の母は、相手が黒人男性ということも初めて知り戸惑うが、娘の気持ちを知って、応援していこうと思う。
黒人女性のメイドはあからさまに嫌悪感を示し、そして、娘の父親は新聞社の社長で黒人差別反対の持論を表明しているのだが、まさか自分の娘が黒人を連れてくるとは、と内心受け入れられず反対してしまう。
その後、彼の両親も同席するが、両家どちらも母は応援、父たちは反対。
頭が固いのはいつも男なのかもしれないが、ややステレオタイプと言えるこのキャラクター造詣がアメリカ社会の典型的な縮図を表しているのかもしれない。
表面上で認めている娘の父親が、潜在意識で認められない苦渋が、根の深さを物語っている。
また、ほとんどが部屋での会話なので、ある意味、密室会話劇と言うような緊迫感も満ちている。
それとやはり、娘の母親役に、史上唯一、オスカーを4度手にしたキャサリン・ヘプバーンというのが大きい。
娘の想いを受け止め、でも夫の気持ちを尊重しつつ、見守る愛情深さが溢れていて、彼女の善意が後半ぐっと感動を高めてくれる。
頑固な父親も名優のスペンサー・トレイシーはキャサリン・ヘップバーンとの共演も多いが、この作品が彼の遺作となった。彼もまた稀有な名優だったと思う。