ちろる

ハワーズ・エンドのちろるのレビュー・感想・評価

ハワーズ・エンド(1992年製作の映画)
3.9
"あなたに是非ハワーズ・エンドをのお家を見せたいの。"
と、ルース夫人がマーガレットに語りかける。
本当に短くも美しい女の友情が切なくも残酷な形で幕を閉じてもハワーズエンドの花々は美しく咲き乱れ朽ち果てかけた屋敷も毅然とした姿で家族を見つめる。

流れるような群像劇は時には美しすぎない人々の所業を映し出すが、それでも文芸的な美しさを保つことが出来たのはこの作品を飾るエマ・トンプソンやアンソニー・ホプキンス、ヴァネッサ・レッドグレイヴやヘレナ・ボナム=カーターなど、イギリス文学の映像化でお馴染みの英国人俳優たちが安定感のある演技で彩っていたからであろう。

レナードが妻に疑われたことで再びシュレーゲル家を訪れるシーンが好きだ。

明るく太陽のようにおしゃべりで優しいオールドミスのマーガレットは長い時間を経てようやく念願のハワーズ・エンドにたどり着くわけだけど、亡くなったルースが笑いかけているかのようなそんな空気感。
しかしそれも束の間しか許されるイギリスの階級社会。

実利主義者と、理想主義者の全く相反する二つの家庭が合わさる時、荒れ狂う嵐も晴天もごちゃ混ぜとなって、また新たな時代が始まる。
どちらもこだわりすぎると幸せにはなれない。

決してこれはハッピーエンドではない。
しかしイギリスならではの優雅な田園風景と文芸作品ならではの穏やかさでうっとりとさせられる。


『眺めのいい部屋』や『日の名残り』『モーリス』が好きな方には是非お勧めしたい作品です。
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