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王女メディアのatomのレビュー・感想・評価

王女メディア(1969年製作の映画)
3.5
パゾリーニといったら、すっごく昔『ソドムの市』で、根性無しだった私は友達を残してスタコラ映画館を脱出、頑張って見通した友達からカマトト(死語?)ぶるんじゃないよっ、とひんしゅくを買った暗い思い出が。

綺麗なマリアカラス見たいし、あれから何十年も経って私も根性ついたはずだし、何事もトライだっとかって、見てみました。…が、いまだに根性なかったです。けっこう早々に、少し足りないみたいなにいちゃんがニコニコ笑っているところから、もう見てられなくなって、だって、イケニエとなってチミドロになることが分かっているのだもの!途中にいちゃんもやっと気がついてジタバタ…いよいよ見てられん!と席を立とうとしましたが、知らないうちに私の周りはお年寄りたち(私もそのうちの一人なのだが😅)でほぼ満席、イケニエのにいちゃん同様左右をがっちり固められて動けない状態になっていた😭おかげで、今作はおしまいまでちゃんと、見通すことができました\(^o^)/

で、あれこれ色々あった末、尽くしてやった男に裏切られた腹いせに酷い復讐をする、王女メディアを演じたマリアカラスは、実生活で同じく男に裏切られたばかりだったので、この役を買って出たんだとか。

マリアカラスが、嫉妬に駆られて卑怯なやり方で相手の女を死なせたうえ自分が産んだ子供たちまで殺してしまう、という役を演じて、もし気が済んでスッキリしたならヨッシャ🎉ですが、どうだったんでしょうか。

パゾリーニさんがなぜこの(とかソドムの市とかの)映画を作ったのか興味が湧いてきました。ソドムの市制作後に何者かに惨殺されたそうですから、謎は多いようですが。人間に愛情を持っていたのか、人間を嫌悪していたのか、希望を持っていたのか、絶望していたのか、…??? 

にくき恋敵のお姫様がみまかる場面はふた通りあり、途中までまるで同じシーンが繰り返されました。

…メディアは「元夫と姫の婚礼を遺恨なく祝福する」と(嘘を)言って、子供たちに、この伝言と共に祝いの(呪いの)衣装を姫へ届けさせる。
そして姫は、子供たちから、メディアからの伝言と衣装を受け取り、礼をのべて子供たちを返したあと…
パターン①姫がその衣装に着替えると衣装が燃えて、姫は城外へ走り出て、焼け死ぬ。
パターン②姫は衣装を着替えず、城外へ走り出て、崖から身を投じて死ぬ。

それから、メディアが三人の子供たちを殺すシーンは、まず湯浴みをさせてから、胸に抱いて寝かしつけ、その後の凶行を暗示するナイフを映す、これを幼い子から順番に一人ずつ丁寧に繰り返した。

繰り返しで目眩させられる感じ、ゴダールの映画を思い出しました。

思い出したといえば、お話の中の昔々のどこか遠い国の風景は、アジアやアフリカや中東のいろんな場所と文化がごちゃ混ぜのエキゾチック(作ってる人達からの)さで、人々の家は江戸時代の日本を旅したイザベラバードが見たかもしれない藁葺きの日本家屋みたいなのとか、モンゴルのパオみたいなのとか、砂漠の中の石造りみたいなのとかがあったりして、それからお姫様たちはいろんな民族衣装を元にしたようなデザインのいろんな美しい衣装で、なんだかスターウォーズを思い出したのでした🚀🌏

昔々の野蛮なおはなしの舞台はごちゃ混ぜオリエンタルなエキゾチシズムがお似合いってことですかい? にいちゃんたちに日本の地歌みたいなのを唄わせたり(もちろん口パク)もしてたけど。
…とかもちょっと、感じました。(当方、根性なしのひねくれ婆かも😅)

ともあれ、神話の意味とか、ずらしながらの繰り返しの意味とかにも思いを巡らせたくなり、面白いです。

++++++
2022.6.9
たまにふいに思い出す。
色々なシーンが美しかった。

せっかくセットで上映されていた
『テオレマ』も、観ておくべきだった!
と今になって悔やむ。
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